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米国インジェクションチューニング研修 その3

それではいよいよインジェクションチューニングのトッププロ・ 
ラスベガスハーレーダビッドソンのヒロ小磯先生による講習のはじまりです。

今回のチューニング講習で使用するコンピューターチューニングシステムは
ハーレー純正であるスクリーミンイーグル・プロ スーパーチューナーです。

  
今回使用するスーパーチューナー  こっちがマスターチューンです。

当店でメインで扱っているシステムはTTS社のマスターチューンですが、
両者はほとんど同じ商品といえ、チューニングテクニックも同じです。

これは、スーパーチューナーの先代にあたる,
ハーレー純正のレースチューナーという商品の開発者が
マスターチューンを製造しているTTS社のスティーブ コール氏であり、
現在のスーパーチューナーも基本的な仕組みは、レースチューナーのものを
引き継いでいるためです。

どちらも純正コンピューターのデーターを書き替えるタイプのチューニングソフトになります。


さて、チューニングに使用するバイクは3台。

①2005年式 FXDX 
排気量 88キュービクインチ(1450cc)
・カム   スクリーミンSE203
・エアクリーナー  スクリーミンハイフローエアクリーナー
・マフラー   バンス&ハインズ プロパイプ コンペティッションバッフル付き

②2007年式 FLHTC
排気量 103キュービックインチ(1690cc)
・シリンダーヘッド T-MAN STAGE-3
・カム TR590
・インジェクター 58MM スクリーミンスロットルボディ+スクリーミンインジェクター
・エアクリーナー zipper’s performance ハイフロー
・マフラー RINEHART-BUB SLIP-ON 
・エキパイ バンス&ハインズ独立エキパイ

③2008年式 FLHTCU-CVO
排気量 110キュービックインチ (1800cc)
シリンダーヘッド SACHS HEADS
カム WOODS 255
エキパイ KLOCK WERKS
マフラー  RINEHART-BUB
エアクリーナー ハイフロー


それでは、まずは2005年式のダイナからスタートです。

このバイク、実は他のショップで既にスーパーチューナーでチューニング済みのもの
なんですが、お客さんがどうも2000回転~3000回転位で今ひとつパワーが出ない、
燃費も悪いということでスーパーメカニック小磯さんに再チューニングを依頼してきたという
いわく付のものです。

”さーて、どんなデータが入ってるのかなー?”と凄く嬉しそうな小磯さん。
余裕の表情はさすがです。

シャシーダイナモの上でバイクを走らせて空燃比(ガソリンと空気の割合)を測定してみると、
(青い線がもともとの調子がイマイチな状態です。)

確かにこりゃダメです。2500回転では空燃比10.0 めちゃくちゃ濃いです。
しかも空燃比が安定せずかなり上下降しているのがわかります。
高回転では逆に燃料が薄すぎます。
これでは走りが安定しませんし、エンジンにも負担がかかります。

ひどいプロがいたもんだと思われるかも知れませんが、そうとも言えません。
特に2005年式のように酸素センサー制御のない、いわゆるオープンループの場合
正しいベースデータを入れても、実際のセッティングを煮詰めなかった場合は
こんな感じになることがよくあります。簡単な作業ではありません。

小磯さんが僕達に解説しながら、空燃比を調整していきます。
1速から5速ギヤまで、様々なアクセル開度で細かく合わせていきます。
この時の数値の入れ方が非常に勉強になります。
それにしても、ものすごいテクニックです。しかも目茶苦茶作業が早い。

  

そして出来上がったのがこのデーター。

(赤い線が先生の調整後、ほとんどフラットです。チューニング前の青い線との
違いは歴然。)

次に点火時期を確認します。
このとき、シャシーダイナモの電気負荷装置(リターダー)をフル活用します。
この装置どんなものかと言いますと、簡単にいうと、でっかいブレーキです。

シャシーダイナモのローラーの上でタイヤは回りますが、
ローラー自体はそのままでは軽く回ってしまうため、タイヤも少ない力で回って
しまいます。簡単に言えば平坦な道を一人乗り走行している状態です。

でも、実際に道路を走るときには、上り坂や2人乗りという条件もあり、
そんなときには、平坦な道や一人乗りの時とくらべてタイヤに抵抗・負荷がかかります。
エンジンにもそれが伝わり、同じアクセル開度でもエンジン回転が落ちてくることになります。
(このときエンジンはノッキングを起こしやすい状態になります。)

電気負荷装置でローラーにブレーキをかけることで、この上り坂や2人乗りなどと同じ
条件を作ることができ、シャシーダイナモでも実際の道路を走っている状態を再現して
正しい点火時期調整と燃料噴射調整ができます。

   
負荷をかけて点火時期を       右がローラー、左がローラーにブレーキを 
調整している状態です。        かける電気負荷装置(リターダー)です。


ちなみに、この電気負荷装置、オプション設定なのですが目茶苦茶これが
高価なんです。見た目は地味なくせに。
ベーシックなシャシーダイナモ本体がもうひとつ買えるほどです。

あんまり高いんで、当店でも購入するか迷ったんですが、チューニングの精度が
これがあるとないとでは大違いなため、泣く泣く借金して買いました。
今となっては買っといてほんとに良かったですが。

先生が独自で得てきた、非常に実践的なリターダーの使い方を伝授してもらい
点火時期調整も終了。

最後にチューニング前と後での馬力とトルクの変化を比較します。
2000~3000回転でのトルクの落ち込みが大幅に改善しています。
最高馬力自体も10馬力アップでした。
無駄なガスの噴射がなくなり、燃費も向上するはずです。

いっぱい文字を書いたら疲れました。読んでる皆さんはもっと疲れたと思います。 
では続きは次回で。いよいよ100馬力オーバーのチューニングです!

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2009年11月21日 22:41に投稿されたエントリーのページです。

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